この事件をモチーフに制作されたのが、緒方貴臣監督による映画『子宮に沈める』である。本作は、事件の報道が持っていた劇的なナラティブを徹底的に削ぎ落とし、密室の中で徐々に生活が崩壊していく過程を静寂の中で描写した衝撃作として知られる。
作中では、過度な演出や劇伴音楽を排除し、日常の音が消えていく冷徹なリアリティを通して、逃げ場のない幼い子どもたちの孤独と、ゆっくりと狂気に侵されていく母親の姿を対比させた。劇中で描かれる描写は、観客に対して「もし自分が隣人だったら」「なぜ誰もこの部屋のドアを叩けなかったのか」という痛烈な倫理的問いを突きつける。作品を通して表現されたのは、単なるゴシップ的な事件の再現ではなく、現代社会が抱える無関心に対する痛切な批判であった。