市販の安価なガリに合成着色料(赤色102号など)が使われているケースがあることから、「自家製でも着色料なしでは赤くならないのでは」という疑念を持つ読者も少なくありません。しかし、正しく仕込んだ新生姜は、一切の人工色素を使わずとも驚くほど透き通った桜色へと自発的に変色します。
生姜甘酢漬けがピンク色になる理由は、新生姜の先端や節の赤紫色の部分に微量に含まれるポリフェノールの一種、アントシアニン系色素の性質にあります。アントシアニンは中性付近では目立たない淡い色調ですが、酸性条件下(pH3〜4程度)に置かれると、分子構造が変化して鮮明な赤色〜ピンク色へシフトする特性を持ちます。甘酢に含まれる酢酸と接触することで、生姜自らの色素が化学反応を起こして全体を美しく染め上げる仕組みです。
したがって、全体を鮮やかなピンクに仕上げたい場合は、新生姜の節にある赤い先端部分を包丁で切り落とさず、あえて薄切りの中にバランスよく混ぜ込んで漬け込むのが決定的なコツです。ひね生姜(囲い生姜)にはこのアントシアニンがほとんど残存していないため、酸に漬けてもピンク色には染まらず、薄い黄色〜べっ甲色の仕立てになります。