プロの施工者が作業時間の7割を費やすと言われるのが、ガラスの下地作りと施工液の調合です。仕上がりの美しさを決定づけるのは、ヘラを動かす技術よりも事前の環境整備にあります。
まず避けて通れないのが車窓ガラス油膜取り下地処理です。内側ガラス面には、長年のエアコン風に含まれる微量な油分や、内装樹脂から気化した可塑剤(いわゆるヤニ・ギラつき)が強固に付着しています。水拭き程度ではこの油膜は除去できません。ガラス専用の内窓クリーナーや中性脱脂剤を用いて完全に脱脂し、スクレーパー(替刃式ブレード)でガラス表面に焼き付いた微細な異物を削ぎ落とす工程が不可欠です。電熱線が走るリアガラスでは金属ブレードが使えないため、超微粒子の研磨パッドを使って傷をつけずに油膜だけを完全にリセットします。
作業のスムーズさを左右するのがカーフィルム施工液の作り方です。ただの水や適当な濃度の洗剤水では、フィルムがガラスに張り付いて位置調整ができなかったり、逆に滑りすぎて糊が定着しなくなります。
現場で推奨される施工液の黄金比率は以下の通りです。
- ベース水:水道水ではなく、不純物を含まない精製水または軟水 1リットル(カルキ染みを防止)
- 界面活性剤:着色料や香料・保湿成分を含まない中性洗剤(濃縮タイプではない食器用洗剤、またはベビーシャンプー)を約3〜5滴(1〜2ml程度)
- 季節調整:夏場の高温時は蒸発が早いため6〜7滴に増やして滑りを長く保ち、冬場は水抜けを早めるために2〜3滴に抑える
道具立てにおいては、ホームセンターの安価なプラスチック製ではなく、適度なコシとしなりを持つスモークフィルム水抜きヘラ(ウレタン製またはフェルト巻きゴムスキージー)を用意することが絶対条件です。硬すぎるヘラはフィルム表面に線傷を走らせ、柔らかすぎるヘラは水分を押し出しきれずに残留水分による水膨れを残す原因となります。