白菜の葉の白い軸(葉脈)や葉先、芯の周辺にゴマを散らしたように現れる黒い粒の正体は、植物生理学上で「ゴマ症(Sesame spot)」と呼ばれる現象です。病原菌による感染症や害虫の被害ではなく、白菜自身が育つ環境ストレスに反応して発生する細胞レベルの変色に過ぎません。
農業試験機関の報告によると、ゴマ症が発生する主なトリガーは土壌中の過剰な窒素肥料の吸収と、結球期の急激な温度変化や過湿環境です。白菜が肥料成分である硝酸態窒素を多く取り込むと、細胞内の浸透圧が変化し、細胞膜に微細な負荷がかかります。これに対抗するため、白菜は自己防衛物質としてポリフェノール(主にアントシアニンやクロロゲン酸類)を過剰に合成・蓄積します。この高濃度に凝縮したポリフェノールが空気に触れて酸化し、黒点として可視化される仕組みです。
したがって、黒い点々は農薬の残留や有害物質ではなく、ポリフェノールそのものです。芯の断面や葉脈の奥深くに点在していても毒性は一切なく、加熱調理はもちろん、浅漬けやサラダなどの生食でも健康上の問題は全くありません。