インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「自分は左利きだから、ベルトも右巻きにしたほうが締めやすい」「利き手に応じて自由に変えてよい」という論説が見受けられます。しかし、これは紳士服の構造を無視した明らかな誤解です。
既製品のスラックスやトラウザーズは、着用者の利き手に関わらず、すべてのフロントファスナーが「右手で引き上げ、左身頃を上にして閉じる」規格で作られています。左利きの男性であっても、スラックス自体の構造が左前である以上、ベルトだけを右巻きにすると金具と生地の干渉を防ぐことはできません。
さらに注意を払うべきは、近年のハイブランドやセレクトショップで流通している「ロゴバックル」や「トップ式バックル」の装着ミスです。ブランドの頭文字(アルファベット)やエンブレムがデザインされたバックルは、左腰から通すことを前提に水平・天地が設計されています。これを右から無理に通すと、ブランドロゴが上下逆さまにひっくり返るという、極めて恥ずかしい事態を招きます。
また、リバーシブルベルトの回転金具が半端な角度のまま固定され、バックルのピンが外側を向いてしまうミスも散見されます。出がけの1秒を惜しまず、鏡の前で「バックルが正位置か」「剣先が左脇へ向かっているか」を確認するルーティンが不可欠です。