多くのリスナーの胸を打つのが、サビで高らかに歌われる「10000回だめで へとへとになっても 10001回目は 何か 変わるかもしれない」というフレーズです。この表現を単なる「根性論」や「努力至上主義」と捉えるのは早計です。
認知心理学における「学習性無力感(何をしても結果が変わらないと感じて努力を放棄する心理状態)」を克服する契機は、確率論的な成功の保証ではなく、「次の1回で状況が変わる可能性がゼロではない」というわずかな主観的期待値にあります。吉田美和が提示した「10001回目」という極端な数字は、精神論ではなく「10000回失敗したという冷酷な事実」をまず完全に受け止めるリアリズムから出発しています。
「悔しくて苦しくて がんばってもどうしようもない時も」と、苦痛や無力感を一切否定せずに肯定するAメロ・Bメロのプロセスがあるからこそ、サビの跳躍するメロディが聴き手の防衛機制を解きほぐし、深い自己効力感を呼び覚ます構造になっているのです。