金本監督の慧眼を語る上で避けて通れないのが、2016年ドラフト会議における大山悠輔(白鴎大)の単独1位指名です。会場のモニターに「第1巡選択希望選手・阪神・大山悠輔」と表示された瞬間、観覧スタンドから漏れた「ええーっ!?」というどよめきと落胆の悲鳴は、今なおファンの記憶に焼き付いています。
当時は創価大の田中正義や桜美林大の佐々木千隼といった大学球界の好投手に注目が集まっており、無名の地方リーグ野手を単独1位指名することは暴挙と受け止められました。ネット上のファン掲示板やメディア論調は金本監督への非難一色に染まりました。しかし、金本氏の意図は揺るぎませんでした。
「甲子園の浜風に負けない打球を飛ばせる、右の和製大砲がどうしても欲しかった。他球団の2位指名までに必ず消える。どうしても獲るなら1位しかなかった」
スカウト会議で周囲の慎重論を退け、自らの首をかけて押し切ったこの決断。入団後、大山は重圧に押し潰されそうになりながらも4番に定着し、2026年には最高出塁率のタイトルを獲得して38年ぶりの日本一に大きく貢献しました。ドラフト当日に起きた悲鳴は、時を経て「金本監督最大のファインプレー」へと評価を180度覆したのです。