事件発生直後から長期にわたり、週刊誌やインターネットの掲示板では様々な謀略論や都市伝説が飛び交いました。「押尾学は身代わりに過ぎない」「部屋には大物政治家の息子や財界の重鎮が同席していた」「捜査に圧力がかかった」といった言説です。
しかし、これらの疑惑について警視庁組対5課(組織犯罪対策第五課)による徹底的な鑑識作業、防犯カメラ映像の精査、携帯電話の通信記録解析が行われた結果、第三者の存在を示す客観的証拠は一切確認されませんでした。
- 防犯カメラの映像記録:六本木ヒルズのエレベーターおよび共用部の監視カメラには、当夜、部屋に出入りした人物が押尾学、亡くなった女性、そして後に呼ばれた知人・関係者のみであることが明確に記録されていました。
- DNA鑑定と現場鑑識:室内に残されたグラスや吸い殻、リネン類などのDNA鑑定において、公判で取り上げられた人物以外の関与は完全に否定されています。
過剰な陰謀論が膨れ上がった背景には、事件現場が高級タワーマンションの一室であったことや、当時の押尾学が持っていた人脈の広さ、そして何より人命救助を怠った不可解な行動に対する大衆の疑念がありました。法廷記録が証明しているのは、特権階級の陰謀などではなく、薬物に溺れた一人の男が保身から救命を放棄したという無残な現実でした。