キンブリー美学を最も雄弁に物語るのが、作中で放たれた鋭利な言葉の数々です。彼のセリフには、読者の倫理観を激しく揺さぶる説得力が宿っています。
代表的なキンブリー名言として語り継がれているのが、イシュヴァールで不殺を貫こうとし葛藤するエドワード・エルリックやマスタングたちに向けた次の言葉です。
「理念のために人を殺せないなどと甘えたことを言うな。死を背負う覚悟がないなら、最初から土俵に上がるべきではない」
殺人を肯定するのではなく、「生きるか死ぬかの極限状態において覚悟を持たぬ者が他者を裁く欺瞞」を鋭く突いたこの言葉は、甘さを捨てきれない主人公たちへの痛烈なアンチテーゼとして機能しました。相手が味方であろうと敵であろうと、己の意思で命を懸けている人間には敬意を払い、逆に覚悟のない日和見主義者には容赦のない制裁を下す。この徹底した信条の純粋さこそが、彼の言葉に抗いがたい重みを与えています。