昼夜を問わず現地を取材すると、歌舞伎町一番街アーチの下では明確な「二面性」が浮かび上がってきます。午前中から昼下がりにかけては、近隣で働く仕込みの業者や配達員、そして落ち着いた様子で自撮りを楽しむ外国人観光客が目立ちます。アーチの真下はクリーンで、新宿の他の繁華街と大きな差異は感じられません。
しかし、時計の針が18時を回りアーチに紅い光が灯ると、街の空気は一変します。客引きの呼び込みや待ち合わせの若者たちで一帯の人口密度は急上昇し、かつて「東洋一の歓楽街」と呼ばれた熱気が一気に立ち込めます。地元商店街の店主は、取材に対して次のように語っています。
「このアーチは単なる看板ではありません。ここから先は『大人の歓楽街』であり、自分の足で歩き、自分の目で判断しなければならない場所だという、いわば境界線の役割を果たしてきました。時代とともに街が浄化されても、あの赤を見るだけで身が引き締まる思いがするというのは、昔からの住人共通の感覚です」
現場の声が示す通り、アーチは物理的な構造物であると同時に、訪れる者の心理的スイッチを切り替える結界としての機能を担い続けています。