ポキ丼の根幹をなす「ポキ(ハワイ語表記:Poke、英語圏ではポケとも発音)」とは、ハワイの先住民族が古くから受け継いできた伝統的な魚介料理です。ハワイ語の「Poke」には「小さく切り刻む」「横にスライスする」という意味があり、獲れたての新鮮な魚をブツ切りにして調味する調理技法そのものを指しています。
ポキの起源は古代ハワイにまで遡ります。冷蔵技術がなかった時代、ハワイの漁民たちは近海で獲れたサンゴ礁の小魚(ハギ類など)を一口大に切り、天然の海塩(ハワイアンソルト)、海藻のリム(Limu)、ローストしてすり潰したククイナッツ(イナモナ)を揉み込んで保存性を高め、そのまま食していました。これがポキの原初的な姿です。
この素朴な伝統料理に劇的な転換点をもたらしたのが、19世紀後半から20世紀初頭にかけてハワイへ渡った日本人移民(日系人)の存在でした。日系移民が持ち込んだ「醤油(Shoyu)」と「ごま油」、そして刺身を食べる文化がハワイの伝統的なポキと邂逅。近海で豊富に獲れるキハダマグロ(ハワイ名:Ahi / アヒ)やカツオ(Aku / アク)を醤油とごま油で和えるスタイルが瞬く間に定着し、今日私たちが知る「アヒポキ」の原型が完成しました。
さらに1970年代以降、ハワイのローカルフード文化が成熟する中で、温かいご飯の上にポキを豪快に盛り付ける「ポキボウル(ポキ丼)」が登場します。炭水化物と魚介のタンパク質、ごま油のコクが一度に摂れる合理的なワンボウルミールは、サーファーや港湾労働者のスタミナ食から全米、そして世界中へと広がり、現代のグローバルなファストカジュアル・フードへと進化を遂げました。