「なすには栄養がない」という噂が定着した最大の原因は、昭和から平成初期にかけて主流だった「ビタミンやミネラルの単純な総量比較」にあります。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年や関連データを確認すると、生のなす100gあたりのカロリーはわずか18〜20kcal前後。ビタミンCは100g中5mg程度、食物繊維も2.2g前後と、数字だけを並べれば「主役級の栄養源」には見えません。
食品成分表の数値のみを額面通りに受け取った情報発信がネット上で拡散し、「なす=ほぼ水、食べても意味がない」という誤った図式が一人歩きしてしまいました。しかし、栄養学の評価軸が「必須ビタミン・ミネラル」だけでなく「抗酸化物質・機能性成分(ファイトケミカル)」へと進化した現在、この見方は完全に過去のものとなっています。
水分が9割を超えているからこそ、なすは低カロリーで大容量の水分・微量ミネラルを効率よく補給できるという独自の強みを持っています。熱中症が多発する猛暑期において、火照った体を自然にクールダウンさせながら細胞の酸化ストレスを打ち消す野菜として、これほど計算し尽くされたバランスを持つ食材は他に類を見ません。