「赤ちゃんの心音を自宅で聞きたい」と考えたとき、まず知っておくべき決定的な事実は、「空気の振動で音を拾う通常のアコースティック聴診器」と「超音波を利用するドップラー心音計」では、心音が聞こえ始める時期が劇的に異なるという点です。
産科医療の現場や各種臨床データによると、器具ごとの使用可能時期の目安は以下の通り明確に分かれています。
市販の一般的な聴診器(大人が胸に当てて呼吸音などを聞くタイプ)を用いた場合、赤ちゃんの心音が確認できるようになるのは早くても妊娠24週〜28週以降(妊娠7〜8ヶ月頃の妊娠後期)です。医師や助産師といった熟練の医療従事者であれば24週前後で捉えられるケースもありますが、医療機器の扱いに慣れていない一般の妊婦さんやパートナーの場合、臨月(36週以降)近くになっても「雑音ばかりで心音が判別できない」という事態が日常茶飯事です。
対照的に、赤ちゃんの心拍動を微弱な超音波の反射波(ドップラー効果)で電気信号に変換して増幅する「胎児超音波心音計(ドップラー心音計)」を使用すれば、妊娠12週前後(妊娠4ヶ月初旬)という極めて早い段階から心音を確認することが可能です。早い人では妊娠9〜10週頃から捉えられるケースもありますが、製品の公式推奨時期はおおむね妊娠12週以降とされています。
なお、お腹の中で元気に育っている赤ちゃんの心拍数は非常に速く、胎児の心拍数正常値は1分間に約110〜160回(bpm)です。これは成人の脈拍(安静時60〜80回程度)の約2倍の速さであり、耳を澄ますと「トクトクトクトク……」あるいは「パッカパッカ……」と、まるで小さな競走馬が疾走しているようなリズミカルで力強い音が響きます。