大手二輪ショップのピットスタッフや、実際にアップハンドルを装着して年間1万キロ以上を走破するオーナー陣への聞き取り調査を行うと、ネット通販のレビュー欄だけでは見えてこないリアルなメリットとデメリットが浮き彫りになります。
ポジティブな評価として圧倒的に多いのは、「低中速域での圧倒的な取り回しの軽快感」と「Uターン時の安心感」です。純正のワイドバーではフルロック時に外側の腕が伸び切ってしまい、アクセルやクラッチ操作が覚束なくなる不安感がありました。ハンドルが20mm手前に近づき、幅が数センチ狭まるだけで、フルステア時でも肘に余裕が生まれ、街中の交差点やタイトな峠道での切り返しが格段にスムーズになります。
一方で、手放しでは喜べないリアルな不満点として挙げられるのが「高速道路における風圧の直撃」です。あるツーリングベテラン(50代男性・都内在住)は次のように証言します。
「ハンドルを手前に引いて背筋を伸ばせるようになった瞬間、下道での腰痛や手の平の痛みが劇的に消えた。しかし、新東名の120km/h巡航区間に入った途端、風圧を受け止める壁が自分の胸板になり、首と腹筋への負担が増加した。結果として小型のメーターバイザーやロングスクリーンを追加導入することになった」
また、施工面における「ワイヤー交換不要」という甘い言葉にも現場メカニックは警鐘を鳴らします。純正のワイヤーハーネスやブレーキホースは、安全マージンを見込んで多少の余裕を持たせてあるものの、20mm以上のアップ・バックを行うと、フロントフォークが完全に伸び切った(全伸長)状態や、ハンドルを左右に全切りした際にホースがピンと突っ張る危険があります。クランプステーの解除やワイヤーの取り回し変更(ルーティングの工夫)を適切に行わないDIY作業は、重大なブレーキトラブルやスロットル戻り不良を誘発するリスクを孕んでいます。