出産前後の過程で赤ちゃんの脳へ供給される酸素や血流が著しく低下すると、医学的には低酸素性虚血性脳症(HIE)と呼ばれる病態に発展します。胎盤早期剥離、臍帯脱出、難産による長時間の陣痛など、様々な要因で引き起こされる胎児機能不全が主な障害の原因です。血流が途絶えた時間が短時間であれば脳組織は自己回復しますが、低酸素状態が長く続くと中枢神経の細胞が損傷を受け、将来的な機能障害につながります。
親御さんが最も恐れる「脳性麻痺」は、この酸素不足による脳組織の損傷部位と密接に関係しています。特に大脳の運動野や基底核、運動神経の通り道である白質がダメージを受けると、筋肉の緊張異常や手足の麻痺が生じます。日本小児神経学会の臨床データによると、出生時の酸素不足が原因となる脳性麻痺は、全体の約15〜20%を占めるに過ぎず、脳性麻痺のすべての原因が分娩時のトラブルにあるわけではありません。先天的な要因や感染症、極低出生体重など多岐にわたる要因が複雑に絡み合っています。
出生時の酸素不足によって現れる初期症状としては、出生直後の自発呼吸の弱さや無呼吸、全身の筋緊張の著しい低下(ぐにゃぐにゃとした状態)、刺激に対する反応の乏しさが挙げられます。これらが数時間から数日続く場合、脳がエネルギー代謝不全に陥っている警戒シグナルとみなされ、NICU(新生児集中治療室)での厳重な全身管理へと直ちに移行します。