全国に数ある神社の中でも、榛名神社ほど多種多様な願掛けに応えるとされる場所は稀です。祈雨・鎮火・五穀豊穣から、商売繁盛、金運隆昌、良縁結び、果ては国家鎮護に至るまで、網羅されない分野が見当たりません。この包括的な榛名神社ご利益の根源は、祀られている祭神の神格と、有史以前から続く自然崇拝の形態に深く結びついています。
主祭神として鎮座するのは、火の神である火産霊神(ほむすびのかみ)と、土の神である埴山姫神(はにやまひめのかみ)の二柱です。古代日本の神話体系において、火と土の結合は陶器の誕生や作物の育成、さらには大地そのものの生成を意味します。「火が土を生み、土が万物を育てる」という産霊(結び)の根源的サイクルを体現しているからこそ、人生におけるあらゆる生成発展の願いを受け止める素地があるのです。
さらに参拝者を圧倒するのが、本殿の背後に直接食い込むように聳える神体岩、榛名神社御姿岩の存在です。国指定重要文化財である本殿は、この御姿岩の洞穴に寄り添うように建てられており、人工の社殿と大自然の巨岩が境目なく融合しています。神仏習合の時代には「満行宮」と称され、修験者たちが命がけの荒行に身を投じた山岳霊場でした。自然そのものに対する原初の畏怖と、神道・仏教の祈りが重層的に積み重なった結果、人々はいつしかこの場所の神威を「万能」と呼び、敬い恐れるようになりました。