「前歯のちょっとしたガタつきだけを安く治したい」。そうした需要を狙い、「原宿神宮前マウスピース矯正が月々数千円から」「部分矯正なら短期間で低価格」とアピールする広告が若者のスマートフォンに溢れています。しかし、ここには歯科医学的な大きな盲点が存在します。
歯は単独で動くわけではありません。前歯をきれいに引っ込める、あるいは並べるためには、必ずその分のスペースを確保する必要があります。奥歯を後方に移動させるか、歯列全体を側方に拡大するか、あるいは歯と歯の間を削るIPR(ディスキング)を行うか、小臼歯を抜歯するかという判断が伴います。噛み合わせの土台である奥歯を触らずに前歯だけを並べようとすると、前歯が前方に押し出されて「出っ歯(口ゴボ)」になってしまったり、上下の前歯がぶつかって奥歯が浮いてしまう重大な機能障害を招きます。
「部分矯正安い神宮前のクリニックを探して契約したが、結果的に口元全体が突出してしまい、別の医院で全顎矯正をやり直して二重の出費になった」という相談例は後を絶ちません。安さとスピードだけを強調するクリニックは、歯根吸収のリスクや咬合崩壊のリスクについて、あえて深く踏み込まない傾向があることを知っておくべきです。