2022年7月8日、奈良市で起きた安倍元首相銃撃事件の一報は、中国国内にも瞬く間に激震を走らせました。中国のSNS「微博(ウェイボー)」などでは、かつての歴史認識問題や台湾寄りの発言を理由に過激な投稿が一部で見られたものの、中国外務省は公式会見で「日中関係の改善に貢献された」と哀悼の意を表明し、ネット上の過激な言説に対して迅速な言論統制を行いました。
翌7月9日には、習近平国家主席が岸田文雄首相(当時)宛てに正式な弔電を打電し、昭恵夫人に対しても個人的な弔意の電報を送付しました。弔電の中で習氏は「かつて安倍元首相と日中関係の改善について重要な共通認識に達した」と生前の功績を高く評価しました。
中国指導部にとって、安倍氏は安全保障面で極めて警戒すべきタフな交渉相手であったと同時に、「自民党内の強硬派をまとめ上げ、対中関係の暴走を食い止めることができる唯一無二の指導者」でもありました。パイプを失ったことに対する中国側の喪失感と危機感は、想像以上に根深いものだったのです。