通常、私たちが発声した音は喉から口、そして外の空気を介して鼓膜を振動させる「気導音」と、声帯の振動が頭蓋骨を通じて直接内耳へと伝わる「骨導音」がバランスよく調和して認識されています。ところが、耳と鼻の奥を連結している「耳管(じかん)」の開閉バランスが崩れたり、音を感じ取る内耳にリンパ液が溜まったりすると、骨導音ばかりが過剰に響く現象が発生します。医学的にはこれを「自声強聴(じせいきょうちょう)」あるいは「自声強調」と呼びます。
自分の声が響く背景にストレスが深く関与している理由は、自律神経の乱れにあります。耳管の周囲には脂肪組織や微細な血管網が存在し、交感神経と副交感神経の緊張度合いによって血流が細かくコントロールされています。過度なプレッシャーや睡眠不足が続くと、耳管周囲の血流が低下して組織が収縮し、本来は閉じるべき管が開きっぱなしになる「耳管開放症」を誘発しやすくなります。
さらに、ストレスホルモンの過剰分泌は内耳の微小循環を悪化させ、内リンパ水腫(内耳のむくみ)を引き起こすトリガーにもなります。「喉頭や耳に器質的な異常がないのに、夕方になると声がこもる」と訴える患者の多くに、自律神経の乱れと首肩の過度な筋緊張が確認されています。自声強調の治し方を模索する上では、耳局所のアプローチだけでなく、全身の緊張緩和が不可欠です。