言葉の源流を辿ると、ラグビー日本代表のワンチームスローガンは、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)と主将のリーチ・マイケル選手らが2016年の新体制発足時に掲げた合言葉でした。当時の日本代表は、出身国、母国語、文化的背景、さらにはトップリーグでの所属チームもバラバラな31人の混成部隊でした。国籍要件が柔軟なラグビー界において、彼らが世界強豪国と渡り合うためには、並大抵の一体感では太刀打ちできなかったという背景があります。
当時の選考委員会が公表した流行語大賞ワンチームの選定理由を振り返ると、「出身国や生い立ちの違いを乗り越え、多様性を力に変えて一つの共通目標へと邁進した姿が、分断と孤立が進む現代社会に鮮烈な希望と共感を与えた」と高く評価されていました。単なる日本的な「一致団結」や「滅私奉公」の焼き直しではなく、個々の違いを認め合いながら強固な結束を生み出した点に、歴史的な意義が見出されたのです。
この奇跡的な結束の根底にあったのが、リーチマイケルのリーダーシップ論です。リーチ主将は自著や特別番組の密着インタビューにおいて、「キャプテンが力で引っ張る時代は終わった。大切なのは、選手一人ひとりが自分の頭で考え、発言できる環境を作ることだった」と赤裸々に告白しています。実際、チーム内にはリーダー陣からなる「リーダーズグループ」が組織され、戦術の決定や規律の策定を選手自身に委ねる権限移譲が徹底されました。
さらに、毎夜のように開かれたカルチャーセッションでは、互いの生い立ちや家族の歴史を語り合い、君が代の歌詞の歴史的背景を外国人選手も含めた全員で学ぶなど、相互理解のインフラ作りに膨大な時間を投資しました。表面的なお友達感覚ではなく、互いの弱さも強みもすべて曝け出した末に勝ち取った信頼こそが、あの歴史的快挙(ワールドカップ初の決勝トーナメント進出)の揺るぎない土台だったのです。