1977年10月30日未明。東京都北区の住宅街で、1本の電話が警察を動かした。現場に急行した警視庁の捜査員が目にしたのは、変わり果てた姿となった40代の母親と、呆然と佇む16歳の高校生だった。少年が身につけていたのは、全国最難関として名高い開成中学校・高等学校の制服ではなかった。だが、その肩書きこそが、彼を逃げ場のない袋小路へと追い詰めていた元凶だった。
少年は名門中学へ進学後、学業不振に喘いでいた。かつて「神童」ともてはやされた過去が、学年が上がるにつれて重荷に変わる。成績表の数字が下がるたび、家庭内の空気は冷え切っていった。事件当夜も、些細な日常の摩擦から口論が勃発。少年は母親が就寝したのを見計らい、ロープを手に取った。衝動的な暴力ではなく、限界を超えた精神の破綻が導いた冷徹な結末だった。