インターネット上の掲示板やSNSでは、「自由すぎて学校が勉強を放置している」「入ると大学受験で失敗する」といった極端な言説が散見されます。しかし、現場を取材するとこの指摘は半分正しく、半分は明らかな誤解であることが分かります。
学校側が指導を放棄しているわけではありません。夏期講習や放課後補習、習熟度別授業など、意欲ある生徒に向けた学習支援プログラムは豊富に用意されています。重要なのは「受講を強制されない」という点です。学校が手取り足取り課題を課し、毎日の小テストで管理してほしいタイプの受験生にとっては「放任」に映るかもしれませんが、自分の弱点を把握してリソースを取捨選択できる生徒にとっては、これ以上なく効率的な環境となります。
また、同校が育んできたクリエイティブな気風も見逃せません。著名な出身者として名高い映画監督の宮崎駿氏をはじめ、詩人の谷川俊太郎氏(定時制中退)、俳優のイッセー尾形氏など、表現の世界で一時代を築いた多くの人材がこの学び舎から巣立っています。
宮崎駿監督がかつて雑誌対談や自著の中で高校時代を振り返り、善福寺川沿いの風景や当時の美術・文学への没頭を語ったように、枠組みに囚われない思索の時間が豊多摩には流れています。偏差値や進学率といった単一の指標だけでは測れない「人間的な奥行き」を育てる空気が、半世紀以上にわたって受け継がれているのです。