政治や経済の解説で頻出する「ハト派(Doves)」と「タカ派(Hawks)」という呼称は、もともと外交・安全保障分野において軍事力行使に対するスタンスを区別するために生まれた政治用語です。温和で平和の象徴とされる鳩に見立てた「穏健派・和平派」をハト派、獲物を鋭く捕らえる猛禽類の鷹に見立てた「強硬派・好戦派」をタカ派と呼んだことが原点となっています。
歴史的な起源をたどると、1798年のアメリカにおいて、対外関係が緊迫していたフランスとの和平を模索したトマス・ジェファーソンらの一派を、主戦論者であった連邦党員が「鳩」と揶揄した記録が残されています。さらにこの対比が世界中に定着した決定的な出来事が、1962年のキューバ危機です。ソビエト連邦によるミサイル配備に対し、空爆や全面侵攻を主張した軍部幹部を中心とする強硬グループが「タカ派」、海上封鎖と外交交渉による平和的解決を模索したロバート・ケネディ司法長官らのグループが「ハト派」と呼ばれ、米国の政策決定過程を報じるメディアを通じて国際的な共通言語となりました。
この対立概念が金融政策の世界へ持ち込まれたのは1970年代から1980年代にかけての狂乱インフレ期のことです。中央銀行が対峙すべき最大の脅威である「物価上昇(インフレ)」に対し、強硬姿勢で政策金利を引き上げて景気の過熱を力づくで抑え込もうとする姿勢を「タカ派」、景気悪化や失業率の上昇を恐れて低金利を維持し、穏やかな金融緩和環境を保とうとする姿勢を「ハト派」と形容するようになりました。ハト派の意味をわかりやすく言えば「景気と雇用の味方」であり、タカ派は「物価安定の番人」と整理できます。