インターネットの掲示板やSNSでは、「コンプライアンスのせいでしんちゃんのおしりが奪われた」「つまらなくなった」と短絡的に語られるケースが散見されます。しかし、この言説には大きな誤解が含まれています。
第1の盲点は、「おしりそのものが禁止されたわけではない」という点です。制作陣が排除したのは「幼児の生肌の露出」という物理的リスクであり、「お尻という部位が持つユーモア」ではありません。実際、しんのすけがズボンをキュッと引き上げてお尻のラインを強調する動きや、お尻をフリフリさせて感情を表現する演出は現在も随所に盛り込まれています。生々しさを取り除き、アニメーションならではの「ポップな記号」へと昇華させたのです。
第2の盲点は、海外展開(グローバリゼーション)における必然性です。『クレヨンしんちゃん』は現在、アジア圏だけでなく欧米を含む世界45カ国以上で放送・配信されています。欧米圏では、幼児であってもアニメ表現において生殖器や臀部を無防備に露出させることは児童保護規定に直結し、厳しい年齢制限(R指定など)が課されるリスクを孕んでいます。世界中の子どもたちがアクセスできるコンテンツとして生き残るためには、肌の露出を抑えた演出スタイルへの刷新が不可欠でした。