高校卒業後、星野ルネはすぐに華やかな漫画界に入ったわけではありませんでした。兵庫県内で工場勤務や飲食業など複数の一般職を経験し、汗を流して働いた現場のリアリティこそが、彼の作家性の根底にあります。25歳でプロの表現者を志して上京したものの、持ち込み原稿が即座に出版社の目に留まるような順風満帆な滑り出しではありませんでした。
転換点となったのは、自らの生い立ちを赤裸々に描いた4コマ漫画をTwitter(現X)に投稿したことでした。「英語で道を聞かれて関西弁で困惑する」「パスポート更新で窓口がざわつく」といった日常のひとコマが、爆発的なリツイートを生み出しました。読者の心を掴んだのは、自らを単なる「被害者」として描くのではなく、相手の悪意のない勘違いをも包み込んで笑いに変える上品なユーモア感覚でした。
出版関係者の証言によると、2018年に毎日新聞出版から刊行された単行本は、発売直後から全国の書店で平積み展開され、重版を連発。読者アンケートでは「人種問題という重いテーマを、これほど声を出して笑いながら読める作品は他にない」と絶賛され、教育現場からの推薦図書指定が相次ぐ異例の広がりを見せました。