レモンカード(Lemon curd)は、19世紀初頭のイギリスを発祥とする歴史あるイギリス伝統のフルーツスプレッドです。伝統的なイギリス菓子やティータイムのテーブルにおいて、スコーンやヴィクトリアサンドイッチケーキのフィリングとして愛され続けてきました。
その最大の魅力は、キリッと際立つレモン果汁の爽快な酸味と、バター・卵・砂糖が織りなすクリーミーで重厚なコクの絶妙なマリアージュにあります。口に含んだ瞬間は鮮烈なシトラスが走り、直後にカスタードクリームのような濃密な甘みとまろやかさが口いっぱいに広がります。
一般のフルーツジャムとの決定的な違いは、その「凝固のメカニズム」と「油脂・タンパク質の有無」に存在します。
果物と砂糖を煮詰めてペクチンで固めるジャムに対し、レモンカードは卵の熱凝固性とバターの乳化作用によって滑らかなペースト状にとろみをつけます。英語の「Curd(凝固物)」という語源の通り、レモンの酸によって卵液が優しく固まる性質を利用した、極めて精緻なパティスリー技術の産物です。