芸能界屈指の食通として知られる寺門ジモンが映画『フード・ラック!食運』で熱烈に描いたように、肉を愛する者たちの眼差しは今や個体識別番号や血統、さらには肥育農家の思想にまで向けられている。
ただ柔らかいだけの黒毛和牛を喜ぶ時代は終わった。サシの美しさだけでなく、脂の軽さ、赤身の力強い香り、そしてどんな環境で牛が育てられたのかというストーリーそのものを味わう。肉バルのシェフたちもまた、自ら牧場へと足を運び、生産者の熱量を直接カウンター越しにゲストへと伝える伝道師となっている。一口食べた瞬間に広がる芳醇な香りは、生産者と料理人が固く結んだ信頼の証拠だ。