『殺戮にいたる病』結末と叙述トリック徹底解説!ラスト一行の真相

『殺戮にいたる病』結末と叙述トリック徹底解説!ラスト一行の真相

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本作最大のフックであり、ミステリー史に残る語り草となっているのが、物語の幕引きとなる「ラスト一行」の戦慄です。読者はページをめくるごとに、東京で発生した凄惨な連続猟奇殺人犯・蒲生稔(がもう みのる)の異常な心理と犯行、息子の変貌を察知して証拠隠滅と苦悩に揺れる母親・蒲生雅子(がもう まさこ)、そして被害者遺族の無念を背負って独自捜査を続ける元刑事・樋口の3つの視点を交互に追体験していきます。

物語のクライマックス、ついに樋口と雅子の追跡が交錯し、凶行の現場で殺人鬼・稔が取り押さえられます。息子の破滅を止めようと現場に駆けつけたはずの雅子。そこで彼女が目撃し、そして読者が突きつけられるのは、あまりにも残酷な認知のズレでした。

読者が終始「母親がグレて凶行に走る大学生の息子を疑っている」と信じ込まされていた構図は、すべて我孫子武丸の手のひらの上での錯覚に過ぎません。現場で取り押さえられた殺人犯・蒲生稔は、雅子の息子ではなく雅子の夫(一家の家長である中年男性)だったのです。そして、部屋で不審な動きを見せていた雅子の本当の息子は「蒲生真(しん)」という名の別の少年でした。

文庫版のラスト一行で放たれる息子の純真な呼びかけによって、それまで脳内で構築していた映像が一瞬にして粉砕されます。父親が殺人鬼であり、妻は夫の狂行を息子のものと誤認し、息子は無邪気にも事件の傍観者に過ぎなかったという悪夢。この一撃によって、読者は自らの先入観という名の牢獄に囚われていた事実を痛感させられます。

森 瞳
著者

森 瞳

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