『絶歌』の発売は、書籍流通の現場にも前代未聞の混乱と分断をもたらした。一部の大手書店チェーンが「遺族への配慮」を理由に店頭販売の見合わせや平積み自粛を決定する一方、「表現の自由を守る」「読者が判断すべき」として通常通り販売を継続する店舗もあり、対応は真っ二つに割れた。
デジタル空間における対応も揺れ動いた。紀伊國屋書店ウェブストアをはじめとするオンライン書店での取り扱いや、Amazon Kindleといった電子書籍プラットフォームでの配信をめぐっては、プラットフォーマーの倫理的責任が厳しく問われることとなった。店頭から姿を消しても電子データとして瞬時に手に入る環境は、加害者本の流通阻止がいかに困難な時代に突入したかを如実に物語っている。