なぜ大人であっても「縦横どっちが先だったか」と迷ってしまうのでしょうか。教育関係者や書道指導の現場を調査すると、主に3つの心理的・視覚的トラップが存在することが浮かび上がってきます。
第1の要因は、SNSで多用されるハッシュタグ(#)や音楽記号のシャープ(♯)との視覚的混同です。デジタルデバイスの操作や記号の手書き時、縦の2本線を引いてから横線を引く癖がついている人は少なくありません。「井」の字面が格子状の記号に似ているため、無意識に記号の運筆パターンを当てはめてしまうのです。
第2の要因は、木材を組む「井桁(いげた)」の物理的イメージです。角材を交差させて組む際、垂直方向と水平方向を交互に重ねる感覚が連想され、「横→縦→横→縦」と交差して書いてしまうケースが後を絶ちません。
第3の要因は、漢字の骨格に対する図形的な錯覚です。「開」や「門」のように外側の枠組みから書く漢字と混同し、外側の縦線を先に引きたくなる心理が働きます。しかし漢字「井」は「横画先行・上部優先」という極めてオーソドックスな井 漢字の書き方の原則に従っています。