油屋で働く釜爺やリンといった脇役たちも、単なる狂言まわしにとどまらない深いバックストーリーを感じさせる。六本のアームを自在に操り、薬湯の調合に没頭するボイラー室の番人・釜爺。頑固でありながら千尋に温かい愛を注ぐ彼は、職人気質と人間味溢れる優しさを象徴している。
千尋の先輩として世話を焼くリンは、設定上「白狐が化けた姿」という裏設定が存在すると言われている。彼女のさばさばとした姉御肌な性格と、油屋を辞めて「海の向こうの街に行きたい」と語る夢は、抑圧された環境の中で自由を求める労働者の生き様そのものだ。釜爺のボイラー室に住み着くススワタリたちも、『となりのトトロ』に登場するまっくろくろすけとの連続性を感じさせつつ、労働という行為を通じて生きていく命の最小単位として愛らしく描かれている。