血液中に溶け込んでいるブドウ糖は、全身の細胞、とりわけブドウ糖しか主たる燃料として利用できない脳にとって不可欠な生命維持エネルギーです。この血中濃度が何らかの理由で減少に転じると、生命の危機を察知した脳が即座に指令を出し、副腎からアドレナリンやノルアドレナリンといったカテコールアミンを大量に血中へ放出させます。
これによって引き起こされるのが、低血糖の手の震えと動悸、そして額や首筋に滲み出る不自然な冷や汗です。自律神経のうち交感神経が急激に過緊張状態へ追い込まれるため、心拍数が跳ね上がり、全身の毛細血管が収縮して血の気が引いたような青白い顔色になります。同時に、胃が激しく締め付けられるような激しい異常な空腹感や、理由もなく落ち着かなくなる不安感・焦燥感が湧き上がります。これらは医学的に「自律神経症状」と呼ばれ、身体がエネルギー切れを知らせる低血糖の初期症状にほかなりません。
この初期アラートを「気合で乗り切ろう」と無視してブドウ糖の補給を怠ると、生体反応は次の危険なステージへと進みます。脳への糖供給が途絶え始めることで、頭の回転が完全にストップし、簡単な計算や言葉の理解が追いつかなくなる思考麻痺、物が二重に見える視覚異常、手足の脱力感といった血糖値下がりすぎの症状が現れ始めます。初期の警告を正しく感知できるかどうかが、重大事故を防ぐ最初の分水嶺となります。