名門芸能事務所スウィートパワーによるスカウトから、彼女の飛躍は息をのむスピードで進んだ。黒木メイサという表現者の根底を決定づけたのは、伝説的劇作家・つかこうへいとの邂逅である。演劇界の巨匠がわずか15歳の少女に見出したのは、型にはまらない野生味と、剥き出しのパッションだった。
2004年、舞台演劇『熱海殺人事件・平壌から来た女刑事』の主演に抜擢された彼女は、過酷な稽古場で言葉を叩き込まれ、感情を極限まで引き裂かれながら舞台上に立った。あどけなさを残した少女が、舞台のセンターで汗と涙にまみれながら怒号をあげる姿は、演劇関係者の度肝を抜いた。「あいつは本物だ」。つかこうへいが遺した賛辞とともに、彼女は女優としての覚醒を果たす。