昭和の伝説スター佐田啓二の早すぎる死と事故の真相|中井貴一への血脈

昭和の伝説スター佐田啓二の早すぎる死と事故の真相|中井貴一への血脈

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佐田啓二の名を国民的スターへと押し上げた決定打が、1953年から1954年にかけて三部作として公開された映画『君の名は』です。岸恵子演じる氏家真知子と、佐田啓二演じる後宮春樹が数寄屋橋で再会を誓い合いながらも運命に翻弄されるすれ違いのラブストーリーは、配給収入の新記録を樹立。「放送時間になると銭湯の女湯から客が消える」と言われたNHKラジオドラマの熱狂をそのまま映画館へと持ち込みました。

しかし、佐田啓二の真骨頂は単なるメロドラマの二枚目にとどまりませんでした。彼の知性と抑えの効いた感情表現に惚れ込んだのが、世界的研究対象でもある巨匠・小津安二郎監督です。

小津作品には『彼岸花』(1958年)、『お早よう』(1959年)、『秋日和』(1960年)、そして小津の遺作となった『秋刀魚の味』(1962年)と立て続けに出演。『秋刀魚の味』で演じた長男・幸一役では、笠智衆演じる父親を気遣いながらも妻(岡田茉莉子)との団地生活に追われる等身大の戦後サラリーマンを極めて自然体に好演しました。小津監督特有のローアングルと緻密な構図の中で、無駄な身振りを削ぎ落とした抑制の美学を体現できた稀有な名優でした。

小林 直樹
著者

小林 直樹

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