では、なぜ中国の標準語が西洋で「マンダリン」と呼ばれるようになったのでしょうか。果物の「マンダリンオレンジ」との関連を連想する人も少なくありませんが、歴史の順序は全く逆です。
中国語マンダリンの語源と由来は、大航海時代にまで遡ります。16世紀、中国(明朝)に進出したポルトガル商人や宣教師たちは、当時の朝廷に仕える高級官僚たちを目にしました。ポルトガル人は、サンスクリット語で「指導者・顧問」を意味する「マントリン(Mantrin)」や、ポルトガル語の動詞「命じる(Mandar)」から、清朝や明朝の役人を「マンダリン(Mandarim)」と呼び始めたのです。
当時、広大な領土を持つ中国各地から集まった官僚たちは、それぞれ異なる地方方言を話していたため、朝廷内での政務が成り立ちませんでした。そこで、行政を円滑に進めるための共通語として使われていたのが「官話(Guanhua)」です。西洋人たちは「役人(マンダリン)たちが話す共通言語」という意味を込め、その言葉を「Mandarin Language(官話)」と名付けました。これがマンダリン英語表記Mandarinの真相です。
言語学において現在でも用いられる中国語官話グループの分類は、この歴史的な官話の分布地域(中国北部から西南部に至る広大なエリア)に根ざしています。