世間一般に広がる最も危険な誤解は、「会社の定期健診で胸部X線(レントゲン)を毎年撮っているから異常があればすぐわかる」という盲信です。断言しますが、非喫煙者の肺腺がんを初期の段階で胸部X線写真から発見することは極めて困難です。
初期の肺腺がんは、レントゲン上では真っ白な塊ではなく、淡いもやのような「すりガラス状結節(GGN)」として出現します。この淡い影は、肋骨や心臓、太い血管の影に重なるとプロの放射線診断医でも識別できません。影がはっきりと白く映る頃には、すでに腫瘍が数センチ大に成長しているか、リンパ節に転移しているケースが後を絶ちません。
この致命的な盲点を打破する唯一の手段が、低線量CTによる早期発見です。低線量CTは、従来のCT検査と比較して放射線被曝量を約5分の1から10分の1(概ね1ミリシーベルト前後)に抑えつつ、肺の断面をミリ単位のスライス画像で可視化します。X線では決して捉えられない数ミリの淡いすりガラス状病変を明瞭に描出できるため、無症状のステージIA期での発見率が飛躍的に高まります。「タバコを吸わないからCTまでは必要ない」という固定観念こそが、最大の生命リスクを招く落とし穴なのです。