あの有名な巻きスタイル、通称「ねじねじ」は、決して計算し尽くされたスタイリストの提案から生まれたものではなかった。海外ロケの際、首元の寒さをしのぐために手持ちのストールを無造作にひねって巻いたことが、すべての始まりだったという。その独特のニュアンスに目を留めたのが、最愛の妻であり女優の池波志乃だった。「それ、すごく似合っているじゃない」。愛妻の一言が、昭和から平成の芸能界を席巻する伝説のスタイルの後押しとなった。
愛用していたブランドも一筋縄ではいかない。高級ハイブランドの最高級シルクストールから、旅先で見つけたノーブランドの麻布まで、彼の眼に狂いはなかった。質感が硬い生地は手で丁寧に揉みほぐし、首元に収まる完璧な「ひねり」の角度を自ら追求した。素材の質感を見極める眼力は、彼が若き日に情熱を注いだ絵画制作の美的感覚と地続きだったのだ。