銀幕やテレビで見せる破天荒な悪党の姿とは裏腹に、八名信夫の私生活は極めてストイックかつ規律に満ちたものである。八名信夫の家族構成において、長年にわたり彼を支え続けてきたのが妻の存在である。
プロ野球選手を怪我で引退し、先の見えない大部屋俳優として日銭を稼いでいた苦節の時代から、妻は常に八名の健康と精神を陰から支え続けた。八名自身、私生活を過度にマスメディアへ売り物にすることを固く禁じており、家族のプライバシーを厳格に守り抜いてきた。これは「私生活が浮ついていては、画面の中で悪役としての重厚な説得力を持たせられない」という職人気質の矜持によるものである。
また、悪役商会の後輩たちに対しては、単なる芸能事務所の代表という立場を超え、実の父親のような情義をもって接してきた。ギャラの分配に透明性を持たせ、礼儀作法や挨拶、一般市民に対する腰の低さを徹底して叩き込んだ。「悪役を演じる人間こそ、実生活では日本一礼儀正しい紳士でなければならない」という教えは、門下生たちの間で今なお固く受け継がれている。