「演技をするな、そこに生きろ」。倉本聰の演出美学は容赦がなかった。スタジオのセットではなく、マイナス20度を下回る本物の富良野で撮影は行われた。息は白く凍り、手足の感覚は奪われる。
画面に映る竹下景子の肌は、極寒の風に晒されて時に赤くかじかみ、メイクで整えられた美しさとは無縁の「生の人間」の姿を晒していた。しかし、それこそが狙いだったのだ。都会で身につけた鎧が、北海道の過酷な自然によって剥ぎ取られていくプロセス。雪子というキャラクターの再生と迷いは、竹下自身の極限状態での葛藤と見事にシンクロしていた。
吐く息の白さすらも芝居の一部に変えてしまうような張りつめた空気感。名優たちの熱量と自然の脅威がぶつかり合った現場で、彼女の女優としての魂はより一層研ぎ澄まされていった。