旧本坂トンネルの真実と現在|心霊現象の噂と事故の真相を徹底検証

旧本坂トンネルの真実と現在|心霊現象の噂と事故の真相を徹底検証

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旧本坂トンネルを巡る怪談の中でも、とりわけ広範囲に流布しているのが「首なしライダー」の伝説です。「かつて峠を攻めていたオートバイ愛好家が、カーブに張られたワイヤーに引っかかって首を切断され、胴体だけでトンネル周辺を今も走り続けている」という戦慄すべきストーリーは、1980年代から1990年代にかけて静岡・愛知両県の中高生を中心に定着しました。

この凄惨な事故は本当に起きたのでしょうか。当時の地方紙マイクロフィルムや警察の交通事故白書、道路管理記録を遡って調査したところ、該当するような猟奇的死亡事故の記録は一件たりとも確認できません。

この噂が形成された構造的原因は、昭和後期における「峠のローリング族ブーム」にあります。昭和53年(1978年)に新本坂トンネルが開通したことで、旧道となった本坂峠は一般車の往来が激減し、格好の深夜のサーキットと化しました。タイトなブラインドコーナーが連続する急勾配の旧峠道では、スピード超過によるスリップ転倒やガードレールへの衝突、谷底への転落といった自爆事故が頻発していたことは当時の交通日誌からも事実です。

当時、近隣の住民や対向車とのトラブル、暴走行為を阻止するためのデマや威嚇情報が口コミで変容し、全国的に流行していた「首なしライダー伝説」というテンプレートと土着の事故多発エリアが合体したとみるのが、現代民俗学における定説です。悲惨な事故という「事実の断片」に、暴走への恐怖と戒めの寓話が肉付けされた結果、怪談へと昇華していったといえます。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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