舞台裏での彼は、後輩たちにとって最も恐ろしく、そして最も頼もしい師匠であった。間寛平をはじめとする多くの座員が、彼の圧倒的な存在感と舞台に対する妥協なき姿勢を今も鮮烈に記憶している。
舞台上でギャグのタイミングがコンマ何秒か狂っただけで、花紀の鋭い視線が舞台袖まで突き刺さったという。しかし、後輩がアドリブで窮地に陥ると、絶妙な一言を差し込んで鮮やかに救い出し、最後にはその座員に大きな拍手が集まるよう仕向けた。酒を酌み交わす場でも説教めいた芸論を語ることは少なく、ただ背中で「舞台人としての粋」を示し続けた。厳しさと底知れぬ温情が同居したその素顔こそ、後輩たちから深く慕われた理由にほかならない。