まだ何者でもなかった20代初頭、細木数子は飲食ビジネスに携わる一般男性と最初の結婚を経験している。戦後の混乱期を生き抜き、持ち前の才覚とバイタリティで自立を模索していた彼女にとって、その結婚は若さゆえの情熱と、生活の基盤を求める焦燥感が入り混じった決断だった。
だが、既存の枠組みに収まる器ではなかった彼女の結婚生活は、わずか3年足らずで破綻を迎える。夫との性格の不一致や価値観の乖離は、彼女を家庭という閉じた空間から解き放ち、夜の社交界へと押し出す決定的な引き金となった。銀座でクラブを経営し、政財界の巨頭たちと渡り合う「女帝」への階段は、まさにこの最初の破局という痛烈な挫折からスタートしている。