音楽教育の現場で最初にぶつかる大きな疑問が、「ト音記号なぜト音と呼ばれるのか」という点です。私たちが普段口にする「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」はイタリア音名ですが、日本の音楽教育および公的な学術用語では、日本語の古典的な音名体系である日本音名ドレミ対応(ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ)が採用されています。
イタリア音名の「ド」から順に日本語の「イロハ」を当てはめていくと、以下の対応関係が成り立ちます。
- ド = ハ(C)
- レ = ニ(D)
- ミ = ホ(E)
- ファ = ヘ(F)
- ソ = ト(G)
- ラ = イ(A)
- シ = ロ(B)
つまり、「ト音」とはまさに「ソ」の音を意味しています。ト音記号の最も重要な役割は、五線譜の下から数えて2番目の線(第2線)にソの音基準を固定することです。五線譜そのものは単なる5本の平行線に過ぎず、どの線がどの音の高さを示すのかという絶対的な基準がありません。そこにト音記号が配置されることで、「この第2線を通る音をト音(ソの音)と定めます」という厳密なルールが定義されるわけです。
英語圏でト音記号が「Gクレフ(G clef)」と呼ばれるのも全く同じ理由です。「クレフ(clef)」はフランス語で「鍵(キー)」を意味する単語であり、音の高さを開くマスターキーの役割を果たしているのが、まさにこの記号の真の意味なのです。