片山萌美の女優人生における最大の分水嶺となったのは、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の映画『万引き家族』(2018年)への出演です。彼女が演じたのは、虐待を受け主人公一家に連れてこられた幼い少女「じゅり」の実母・北条保代役でした。
出番の長さ自体は決して多くないものの、自らの保身と苛立ちから子どもを怒鳴り散らし、テレビカメラの前では悲劇の母親を繕うその姿は、観客の心に鋭い爪痕を残しました。当時の映画関係者や批評家からは、「グラビアのイメージを完全に粉砕した」「人間のエゴイズムを体現する目の据わり方が尋常ではない」と絶賛を浴びました。
その後も、谷崎潤一郎の耽美世界を映像化した映画『富美子の足』での主演をはじめ、地上波の出演ドラマ(『警視庁強行犯係 樋口顕』シリーズ、『科捜研の女』、『相棒』、『特捜9』など)に継続的に出演。華やかな愛人役から、事件の鍵を握る影のある証言者、冷徹なキャリアウーマンまで演じ分けるその演技の評判は、演出陣の間で「作品の質感を一段階引き締めてくれる信頼のピース」として定着しています。