2017年2月7日に講談社から刊行された白石麻衣写真集『パスポート』は、初版10万部という当時のアイドル写真集としては強気の部数でスタートしました。しかし発売即日で完売店が続出し、発売当日に異例の重版が決定。その後も右肩上がりのペースを維持し、講談社における『パスポート』の重版回数は30回を突破、最終的に発行部数は50万部の大台を突破しました。
講談社の販売担当者が当時語った談話によると、従来のアイドル写真集の販売動態とは根本的に異なる特徴が見られました。通常、アイドルの写真集は初動の2週間から1ヶ月で売上の7割から8割を消化し、以後は緩やかに下降線をたどります。ところが『パスポート』は、発売から半年、1年、2年が経過しても月間数千部単位のバックオーダーが止まらず、ロングセラー作品として定番書棚に置かれ続けたのです。
この前代未聞の現象を後押しした最大の要因は、「購買層の約3割から4割を女性が占めた」という点にあります。女性ファッション誌『Ray』の専属モデルとして培われた女性ファンの支持基盤が強固であったことに加え、撮影を担当した写真家・中村和孝氏の柔らかな光の捉え方が、いやらしさを完全に排除した「憧れの透明感」を演出することに成功しました。男性読者にとっては極上のグラビアであり、女性読者にとっては美容や体型づくりのバイブルとなる。この二項対立の解消こそが、50万部突破の最大のエンジンでした。