つぶ貝を調理する上で絶対に避けて通れないのが、天然の神経毒「テトラミン」を排除するつぶ貝の毒抜きと安全な食べ方の知識です。厚生労働省の食中毒統計や食品安全データでも毎年のように注意喚起がなされている重要事項です。
エゾボラ(マツブ)やヒメエゾボラ(青つぶ)などの唾液腺には、高濃度のテトラミンが含まれています。これを誤って摂取すると、食後30分〜2時間程度で激しい頭痛、めまい、酩酊感(お酒に酔ったようなふらつき)、視覚異常などの神経症状(いわゆる「貝酔い」)を引き起こします。死亡例こそ極めて稀であるものの、激しい身体的苦痛を伴います。
極めて危険な盲点は、テトラミンは耐熱性があり、どれだけ加熱調理しても絶対に分解されないという事実です。煮汁に溶け出して料理全体を汚染するため、「煮てしまえば毒が消える」という認識は完全な誤りです。必ず加熱前に以下の手順で唾液腺を物理的に切除しなければなりません。
【唾液腺の正しい除去ステップ】
1. 殻から身を取り出したら、足(筋肉部)の側面を縦に深く切り開きます。
2. 切り込みを開くと、内部から左右一対の淡黄色〜乳白色をしたクリーム状の塊(内臓脂・アブラ)が露出します。
3. この白っぽい塊こそが唾液腺です。指先や包丁の先を使って残さず完全に削ぎ落とし、流水で洗い流します。
なお、小ぶりで居酒屋の定番である「灯台つぶ(クビレバイ等)」は唾液腺にテトラミンをほとんど蓄積しない種として知られており、一般的に殻付きのまま煮付けにされます。しかし、大型の殻付きつぶ貝を扱う場合は、安全を最優先にして殻を割るか一度身を引き抜いて唾液腺を除去するのが鉄則です。