海外旅行や語学学習の現場でしばしば話題にのぼるのが、「シュークリームは海外で通じない」という事実です。これは単なるネット上の都市伝説ではなく、言語構造上の明確な理由が存在します。
私たちが親しんでいる「シュークリーム」という名称は、フランス語の「シュー(chou)」に、英語の「クリーム(cream)」を強引にドッキングさせた完全な和製外来語(和製洋語)です。言語体系の異なる2つの国の言葉を独自に融合させたハイブリッド表現であるため、本場フランスはもちろん、英語圏でもそのままでは意味が通じません。
特に英語圏のカフェやベーカリーで「シュークリームをください」とカタカナ発音のまま注文すると、店員には「shoe cream(革靴用の靴墨・保革ワックス)」と認識されてしまうリスクがあります。甘いペストリーを求めている客から突然「靴クリームはあるか」と尋ねられる形になるため、現地のスタッフが怪訝な表情を浮かべるトラブルは今なお後を絶ちません。
英語圏でこのスイーツを注文する際の正しい呼び方は「cream puff(クリームパフ)」です。「puff」は「ふわっと膨らんだもの」を意味し、空気を含んで膨らんだ生地にクリームを詰めた構造を端的に表しています。また、イギリスやオーストラリアの伝統的なティールームでは「choux bun(シューバン)」、より小ぶりな一口サイズのものであれば「profiterole(プロフィットロール)」と表記されるケースが一般的です。