イモリ・ヤモリの区別がついたところで、次に多くの観察者を悩ませるのが「トカゲ」と「カナヘビ」の境界線です。どちらも昼行性の爬虫類ですが、ニホントカゲとカナヘビの違いを押さえれば見誤ることはありません。
ニホントカゲは体全体が極めて滑らかな鱗で覆われており、濡れたような光沢を放ちます。特に幼体期から若鳥期にかけては、尾が息をのむほど鮮烈なメタリックブルー(構造色)に輝き、体側には明瞭な黒褐色の縦縞が入ります。成熟したオスになるとこの青みは消え、褐色味を帯びた精悍な風貌へと変化します。
一方、名前に「ヘビ」とつきながらトカゲの仲間であるニホンカナヘビは、体表がヤスリのようにザラザラとした質感で光沢がありません。全長の3分の2ほどを非常に長い尾が占めており、全体としてスレンダーかつ乾いた質感を保っています。草むらの先端や低木の枝先を軽やかに渡り歩くのがカナヘビの特徴です。
そしてトカゲ類を語る上で欠かせない生態が、外敵に襲われた際に見せるトカゲの自切と尻尾再生の理由です。トカゲの尾の骨にはあらかじめ「自切面」と呼ばれる切れ込みが存在し、筋肉を急激に収縮させることで出血を最小限に抑えながら尾を切り離します。切り離された尾は数分間にわたって激しくのたうち回り、捕食者の視線を釘付けにするデコイ(身代わり)として機能します。
しかし、この自切はトカゲにとって莫大な代償を伴います。尾は栄養分を蓄積するエネルギー貯蔵庫であり、切り離すことで繁殖力や越冬生存率は著しく低下します。後に生えてくる「再生尾」には元の美しい骨格構造はなく、一本の軟骨チューブで支えられた代替品に過ぎず、体色や鱗のパターンも元通りには戻りません。生き延びるための最後の切り札である自切を、人間の好奇心で無理に誘発させてはなりません。