かつて東京湾で獲れた魚介を指した「江戸前」。温暖化による海水温の上昇は、皮肉にも東京湾の生態系を変え、新たな美味をもたらしている。これまで見向きもされなかった未利用魚や、南から北上してきた魚種を、職人たちが最先端の熟成技術で極上のネタへと昇華させているのだ。
「昔の真似をしていては生き残れない」と語るのは、日本橋の若き寿司職人。伝統の赤酢を守りつつも、ハーブやオリーブオイルのニュアンスを微細に加えた新しい江戸前寿司が、感度の高いニューヨーカーや地元の食通たちを唸らせている。気候変動すらも味方につける、それが東京のタフさだ。