『花』が世に出る直前、ORANGE RANGEを取り巻く状況は熱狂と喧騒の渦中にありました。『上海ハニー』や『ロコローション』のメガヒットにより、世間には「底抜けに明るい沖縄の若者たち」「パーティーロックバンド」という強烈なパブリックイメージが定着していた時期です。
そうした中で舞い込んだのが、東宝配給の超大作純愛映画の主題歌オファーでした。当時の制作ドキュメンタリーや関係者の証言によると、リーダーであり楽曲の核を担うNAOTOは、映画の脚本と原作本を徹底的に読み込み、スタジオに籠もってメロディの構築に没頭したと明かされています。
「自分たちの得意なテンポ感ではなく、映画の余韻を壊さない極上のメロディを作らなければならない」という強い覚悟のもと、まず生まれたのがあの象徴的なピアノリフでした。そこにNAOTOならではのヒップホップ的なビート感と、温かみのあるアコースティックギター、流麗なストリングスが融合。メンバー全員で意見を出し合いながら紡ぎ出された歌詞は、これまでの遊び心を完全に封印し、ひたむきな愛の言葉だけで構成されました。バンドのパブリックイメージを自ら塗り替える覚悟が生み出した、まさに奇跡的な転換点だったのです。